JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

ハムの QRP

QRP とは。

ウィキペディアによれば、

QRP(QRP運用)とは、アマチュア無線において空中線電力を低減して運用することである。Q符号で「こちらは、送信機の電力を減少しましょうか?」を意味する"QRP?"に由来する。QRPの対義語はQROである。

また、電波法には「無線局を運用する場合においては、空中線電力は、(中略)通信を行うため必要最小のものであること」と定義されています。

 
 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢  

430 メガをワッチしていたある日のこと。 

59 で入感です。
こちらは2階の部屋からハンディ機で QRP 運用しています。
アンテナは付属のヘリカル、QRP の1ワットで信号弱くてご迷惑をお掛けします・・・ 

ん~。
確かに送信パワーだけで言えば1W(5Wまでが QRP)なので、QRP には違いありません。。。

ただ私は、ハムの QRP といったら送信パワーのことだけじゃないと思っていて・・・
今日はそんな話です。

 
 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢    


私は、「QRP = アンテナ技術の凄さ」であって、

「小さなパワーで相手の無線機にガツンと電波を届ける」

ことだと思っています。

すなわちアンテナ系がどれだけ充実してるかってことで、QRP とアンテナ技術は同義じゃないかと思ったりしています。

今時自作は珍しく、「QRP=5W 以下の自作機」と考える人はホンの一握りのことで、無線機のパワーが5W 以下ならそれだけで「QRP」と呼んでいるんじゃないでしょうか。

まぁ、5W以下の無線機と言えば V/U のハンディ機が一般的なわけですが、
これで交信相手にメリット5の電波を届けるには、もうアンテナを充実させる以外に道はないということです。

どうしてもアンテナ整備が難しかったりすると、QRP 愛好家は微弱なパワーで遠方と交信するためのロケーション選びにこだわり、山頂や高層ビルで運用を行ったりしています。

少々、言葉尻を捉えた揚げ足取りではありますが、
部屋の中からハンディ機の運用なら、QRP って言わない方がいいかなぁ~って。

「あなたの信号が弱いのは QRP だからじゃないよ。アンテナが貧弱なだけだよ。」
・・・って、思われちゃう。(ゴメン。思っちゃいました。m(__)m)

大事なことなのでもう一度繰り返しますが、
「QRP って、微弱なパワーでも相手にメリット5で電波を届けること」
だと思っているので。

通信ということを考えると、交信している相互で了解度が5で交信できることが理想ですよね。
相手にちゃんと電波を届けて会話を成立させる必要がありますから。

そもそものハムでいうところの QRP って、「相手が了解できるギリギリまでパワーを落とす」ってことなので、まずは相手が了解できる状況であることが前提なんです。

QRP 側のパワーはどれだけ微弱でも構わないけど、相手が了解できない状況っていうのは、ちょっといただけませんから。

QRP 側は了解度5で受信してるけど、相手側はノイズに埋もれた信号を SQ 解除して一生懸命に聞き分ける・・・そんな状況って、なんか変です。

どう考えても QRP で重要なのはアンテナなんだよね。

アンテナの効率が悪いと、アンテナから放射される実際のパワーだけが弱くなるだけじゃなく、同時に耳も悪くなるので、まぁ最終的に交信できる相手は超ローカル局だけに限定されるでしょうし、このまま運用を続けても、ハムで交信すること自体がつまらないものになってしまうんじゃないかと、いらぬ心配までしてしまいます。

アンテナ・・・簡単なものでいいから、部屋の外にだしてみるといいと思うよ。
交信できる範囲も拡がって、案外ハムって多いんだってことに気づいたり、59+ のリポートをもらったりと・・・絶対楽しくなるから。
そしてアンテナ沼へと落ちていくことになるんだけどね(笑)。。。

まぁ、そんなことを突き詰めていくのが QRP のおもしろいところで、難しいところなんでしょうけど。

ということで、前置きが長くなりましたが、本日は QRP の要素のひとつである送信出力とアンテナに着目した、「実効輻射電力」について取り上げてみます。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


実効輻射電力とは、 

「空中線に供給される電力に、与えられた方向における空中線の相対利得を乗じたものをいう。」(電波法施行規則第2条第1項第78号)


送信機からの出力をパワー計で測定してピッタリ 10W だったとします。
でもこの 10W。
送信機自体の性能やスペックの話であって、実際にアンテナから外に放射される電力とは違います。

実際には送信機とアンテナは同軸ケーブルで接続されていて、そして空間へと放射されます。
この送信機とアンテナまでの同軸ケーブルのロスや、アンテナのマッチングなどによって、実際に放射されるパワーは変化するわけです。

送信機の出力である 10W は、同軸ケーブルのロス分だけ減衰してアンテナへ伝わり、そして今度はアンテナの利得分だけ電力は増幅されて空間へと放射されます。


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図中の A は、ハンディ 1Wで、2dBi のヘリカル。
本当に放射される電力の実効輻射電力(EIRP)は 1.585W となります。

図中の B は、同軸ケーブルのロス(給電線損失)が 0.5dB、アンテナのゲインが 10dBi、アンテナとの整合が完全にとれていると仮定すれば、本当に放射される電力の実効輻射電力(EIRP)は 89W です。

アンテナゲインの dBi の i は、アイソトロピックアンテナと呼ばれる完全等方性アンテナを基準にした絶対利得を表していて、isotropic の頭文字 i を付けて dBi と表記しています。

そしてこの dBi を基準にした実効輻射電力を EIRP(直訳すると、実効等方性輻射電力)と呼んでいます。

実はこのアイソトロピックアンテナですが、これは理論的な点アンテナのことであり、電波をすべての方向に同一強度で放射するという、まるで夢のアンテナなのです。

一方、半波長ダイポールアンテナを基準にした相対利得は dBd と表記され、この dBd を基準にした実効輻射電力を ERP と呼んでいます。

私としてはハムの実運用を考えると、実態がつかめない dBi を使うより、半波長ダイポールアンテナを基準にした dBd を使った方が現実的じゃないかと。

余談ですがハムのアンテナカタログの利得表記はほとんどが絶対利得の dBi を使ってます。
これは dBi の方が、相対利得の dBd より少しだけ大きな数字として見せることができるからで、営業的なことを考えての数字のマジックなんだろうと思います。

もう少し正確にいうと、カタログスペックとして dBd を使うとなると、すでに半波長ダイポールの絶対利得は 2.15dBi とわかっているので、この分だけ低い数値を掲載する必要があるということです。
最後の添え字を i にすることで、利得を少しでも大きく見せる・・・そんなセコイ理由なのかな、と勘ぐりたくもなってしまいます。

ちなみに半波長ダイポールアンテナ基準の相対利得 dBd で考えると、
図中の B は、

  dBd = 10W × 0.89 (-0.5dB)  × 6.1 (10dBi - 2.15dBi) = 54.3W

となり、 dBi 表記の場合と比べて 30W 以上の違いがでてしまいます。

で、これは 10W のパワーで送信すると、ダイポールアンテナから 54.3W で送信した時と同じ電波の強さになるということです。
(dBi 表記なら、理論的なアンテナから 89W で送信した時と同じ電波の強さになるということ。)
 

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仮にハンディ局の A が、15dBi の八木アンテナを使うと、
今度は1W のハンディ機の実効輻射電力は、約 30W にパワーアップします。
しかも耳の感度も桁違いに改善されます。(30W のブースターを挿入するより絶対マシ。)

さらにハンディ局が、20dBi のスタックアンテナでも上げようものなら、実効輻射電力は B と同じ 89W となり、A、B 双方で同じ電力です。

これぞ QRP です。
小さなパワーで、信号をしっかり相手に届けています。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

ということで、
QRPer は卓越したアンテナ技術を駆使して、いかに相手に強い電波を届けられるかが腕の見せ所であるというわけです。

「QRP だから相手に弱い信号で届いても構わない・・・」と考えるより、
「QRP なのでアンテナ関係に力を入れてます・・・」と答える方がベストなのではないでしょうか。

10mW の微弱な QRPp でも相手に 59+ の信号を届けて、そして相手の信号も 59+ で受信する・・・
そんな高度なアンテナ技術と設備を持ちたいものです。

「どうだ、QTH〇〇から 10mW で送信してるぞ。電波、強いだろう!」って、言ってみたいなぁ~。

 

  

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