JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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モールス符号の短点、長点の比率は1:3?

今更ですが、Wikipedia で「モールス符号」を引くと、 

国際モールス符号は短点(・)と長点(-)を組み合わせて、アルファベット・数字・記号を表現する。長点1つは短点3つ分の長さに相当し、各点の間は短点1つ分の間隔をあける。また、文字間隔は短点3つ分、語間隔は短点7つ分あけて区別する。

と記述されています。

これは、

  1. 短点の3倍が長点の長さ
  2. 各点のスペースは短点の一つ分
  3. 文字間のスペースは3短点分(1長点分)
  4. 語と語のスペースは7短点分

ということであり、 

すなわち、短点と長点は1:3の関係であるということ。


この「1:3」の比率についてですが、初めてモールス信号を学んだころから何となく違和感を感じてきたことを、今日に至るまで感じ続けています。

過去には、電信級という試験が存在しており、この試験に合格するためには1分間に25文字のモールス信号を聞き取り、それを筆記する必要がありました。試験の範囲には微妙な差異がありましたが、内容的には現在の3級アマチュア無線技士に相当するものでした。

そのモールス信号の速度が遅い(これこそが問題なのです!)ことから、電信に興味を持った無線愛好家が最初に挑戦する免許でもありました。

そして、この電信級についてですが、当時の受験生の多くが「この試験の受信部分は難しい」と感じていたようです。

試験会場で流れるモールスは短点と長点の比率が正確な1:3の符号です。


(当時の電監では、電子的な器具を使って1:3の厳格な比率を保持する符号を生成していたようです。)

実際の試験会場で聞くモールスは、アルファベットの 「A」 が「トン・ツー」とは聞こえずに、「ツー・ツーーー」と、少し短い長点と、少し長い長点にしか聞こえませんでした。

このような聴覚の違和感が、「電信級の試験は受信が難しい」というイメージを生んでいたのかもしれません。

初めての実技試験で緊張するのは当然ですが、「短点と長点の比率が厳密に1:3の、おそ~いヘンテコなモールス」を聞かされるんですから、これは聞きづらいに決まっています。

かつて、このような特異な電信級の試験を受けて、「トンツーは自分には向かない」と思ってしまった皆さん、あなたの受信能力が不足していたわけではありません。

遅いモールス符号にも関わらず、一本気に1:3の比率を保つ符号は、聞き取るのが難しいと感じるのは誰でも同じでしょう。

このような聞きづらいモールス符号が試験科目になっている電信級に合格するために、厳格な1:3の比率で練習を重ねるというのはどうなんでしょう。

こんな特異なモールス符号ばかり聞いていても、スキルの向上は期待できません。そして、次第に「モールスは難しいもの」という認識が広まってしまいます。

実際、昔の電信級の実技試験はあまりにも無駄な試験でした。

しかし今、ハムから実技試験がなくなったことは、大変喜ばしいことで、まずは筆記だけの3級に合格して、その後ゆっくりと、少し速めのモールスで練習するのが良いです。

特異なモールスを聞くことに慣れることに無理に時間を費やすのではなく、自然なペースで練習を進めることが、モールスの聞き取りスキルを磨く上で重要と言えるでしょう。
 

遅いモールスが聞きづらいという、極端な例をひとつ


アルファベットの「A」(トン・ツー)1文字を10秒で送信するとします。

1:3の正確な符号ですから、トンが2秒で、ツーが6秒です。

そうなんです。
当たり前のことですが、こんなモールスは聞き取り難いんです。

これをトンはトンの短い短点とし、
長点を限りなく10秒に近い長さで送信すれば、
1文字10秒の符号でも確実に相手に伝わります。(相手に伝わることが重要)
 

短点さえ判別できれば、後は長い長い長点が続くだけなので確実に受信できます。

 

  ーー  ーーーーーー

  2秒    6秒

 

  ・ ーーーーーーーーー

     約10秒

 

それでは、モールス符号の1:3という比率は正しくないということなのでしょうか。
いいえ、間違いではありません。

モールス符号の長点と短点の比率は、
速度によって変化した方が聞きやすいということです。

短点はあくまでも短点であり、その長さは速度によって変化することはないのです。

速度で変化するのは、

  (1) 長点の長さ

  (2) 短点と長点の間隔(符号1文字を構成する各点の間隔)

で決定するべきものなのです。


実感として1:3の比率で聞きやすいモールスは、約50~約100(字/分)程度(あくまでも私見ですが)で、これより遅い速度では、1:3.5  や 1:4 のように長点が長くなり、各点の間隔は少し広がっていく。

逆に、100(字/分)を超えた速度では、今度は 1:2.7 や 1:2.5 のように、長点は短くなって、各点の間隔は狭くなっていく。

速度(字/分) 比率 間隔
100 以上 1:3以下 短点1つ分以下
50 ~ 100 1:3 短点1つ分
50 以下 1:3以上  短点1つ分以上

試験会場で聞くモールスとして聞きやすいのは、ハムなら1アマの通信術で、
これは速度的にも適当に速く、1:3 の比率の符号として一番聞きやすいと思います。

■ ■

 

私が作成した CW 関連ソフトウェア(LearningMorseCW MANIA)は、今のところ、短点と長点の比率は1:3で開発しています。

自称 CW マニアとしては今回のこの「理屈」をプログラムに実装しないと中途半端な気がしてなりません。。。

短点は短点の長さのまま(トンはトン)であって、速度で変化しない。

変化するのは、長点の長さと、短点と長点(各点)の間隔のみである。

モールスの美しさには、必ず何らかの規則性が存在します。
この規則性を見つけ出し、プログラムに取り入れることができれば・・・マニア冥利に尽きるのですが。